人的資本経営は、人材を投資対象の資本とみなし、価値を最大限に引き出すことによって中長期的な企業価値向上を図る経営手法です。時価総額に占める無形資産のウエイトが有形資産を上回る時代となり、また、ESG経営の高まりによって人的資本に注目が集まる中、情報開示の重要性が増しています。

人的資本経営を推進するにあたっては、まず情報開示をもって投資家ほかステークホルダーとの対話がスタートしますが、ここでは、企業としてどのような姿になりたいのかという企業のパーパス、具体的にどのような状態になれば実現したと言えるのかを示す目標、さらにその目標達成のプロセス・方針を示すことが必要です。また、取り組みの結果、施策と企業価値向上の関係性を示すことも求められます。

2023年3月の決算期以降、有価証券報告書において人的資本情報に関する事項の開示が義務化されましたが、情報開示元年ということもあり、有価証券報告書等を見てもまだまだ開示が不十分であったり、開示そのものが目的化しているような企業も少なくありません。

そのような中で、ESG経営が注目される前から明確なストーリーをもって人的資本の向上に積極的に取り組んでいる企業もあります。そのような企業では明らかにPBR等の企業価値の向上に寄与しており、投資家も安心して投資対象に選べるので株価も上昇し、時価総額も拡大します。

このコラムでは、そのような先進企業の事例をご紹介しながら、人的資本向上のための情報開示・可視化や企業価値向上に真に有効な施策とは何かを検証します。