次世代経営人材の育成

次世代の経営幹部を育成するサクセッションプランの拡充は、企業経営にとって最も重要な経営課題の一つですが、投資家にとっても企業の持続的成長を見極め、投資判断を行う上で大変重要なポイントです。

人的資本経営を推進する上での重要視点である「経営戦略と人材戦略の連動」を実現するためには、リーダーシップを発揮して経営戦略や企業変革を強力に推進できる真のリーダーが必要であり、そのような人材を輩出するには、通常のOJTや汎用的な育成カリキュラムではなく、骨太の育成プランが必要です。

2021年6月に改訂されたコーポレートガバナンス・コードにおいても「新任者をはじめとする取締役・監査役は、上場会社の重要な統治機関の一翼を担う者として期待されている役割・責務を適切に果たすため、その役割・責務に係る理解を深めるとともに、必要な知識の習得や適切な更新時の研鑽に努めるべきである。このため、上場会社は、個々の取締役・監査役に適合したトレーニングの機会・斡旋やその費用の支援を行うべき」とその重要性が指摘されています。

経営戦略を力強く推進できる人材を選抜・育成できるかが将来の企業の行く末を左右しますので、経営環境の変化と採択する戦略を踏まえ、あるべき経営者の姿を描いたうえで、独自カリキュラムを練り上げる必要があります。

育成すべき経営者像を議論する際は、VUCAと称される変化の予測がつかない経済環境の中で、例えば少子高齢化の進展による人口減少とマーケット縮小が見込まれる中、新事業や新市場に果敢に攻め込む、またはスピード感をもってビジネスモデルの転換を図る、あるいは不採算事業の縮小や撤退によりコア事業に集中することで経営の効率化を図るなど、時代によって経営課題の優先度や重要度が異なることも考慮したうえで適材を選び抜かなければなりません。

このように、将来の環境変化も予測しつつ、自社にとって必要な資質を持った経営人材像を描き、その要件の多くを満たす人材を探し出し、効果的な育成プログラムのもとタフアサインメントを繰り返しながら将来の経営者として相応しい力量を持った人材に育てていくことになりますが、このようなプロセスを経て理想的なスキルを兼ね備えた経営者に昇りつめた社員は実際にはなかなか存在しません。

したがって、リーダーとして部下の能力を最大限引き出すことで自分の弱みを補い、リーダシップを発揮して全体の組織力(ケイパビリティ)を底上げし、攻めも守りも両面から経営課題に立ち向かう、いわば組織マネジメントの王道を行くことが、経営人材に求められる最も重要な資質と言えます。

いくつかの上場企業では、次世代の経営人材育成をマテリアリティとして長期的視点で取り組んでいる企業も散見されますが、今や人的資本経営の推進において市場関係者が注目を寄せるテーマと認識されている割には、現状では選抜型研修の導入等が未だ十分に行われていない状況です。(下図参照)
経営戦略と人材戦略の連動を図る上で、経営人材の育成は最も重要な人的資本投資策の一つであり、早期の導入をお勧めいたします。

出所:労務行政研究所 労政時報 第4053号