目標管理制度の見直し

目標管理制度は古くから多くの企業に採用されているポピュラーなマネジメントツールですが、人事制度においては業績評価上の成果を測定する機能を担うことが一般的です。ある調査によれば、従業員数規模の大小によらず9割近い企業が目標管理制度を採用しているものの、ほとんどの企業において制度運用上の問題を抱えているとのことです。

ここでは、目標管理制度において、特に運用面で生じている問題点を踏まえ、これからの目標管理制度の在り方についてどう変容すべきかをご説明します。

ありがちな問題と対応策

目標管理制度は、1990年代後半から2000年代にかけて導入が進んだ成果主義型人事制度における成果の大きさを測定する評価ツールとして脚光を浴びることとなりました。これにより設定した目標の達成度を評価し、個人の処遇にストレートに反映する企業が大幅に増加しました。

そして、成果主義導入を背景に目標管理制度の様々な問題が指摘されるようになりました。こうして浮かび上がった問題点は次の3つに大別されます。

(1)期初(目標設定時)での問題点
目標管理制度の巧拙は、目標設定でほぼ9割方決まるとよく言われますが、個別問題の多くは適切に目標設定が行われていないことが原因となっている場合が少なくありません。目標設定における問題点は、主に次の3つの領域に分類されます。

➀組織目標との連鎖が弱い
「個人目標を設定する際に上位の組織目標からのブレークダウンが適切でない」
「組織目標(方針)そのものが不明確である」
「縦の目標連鎖ばかりが意識され、横の目標連鎖が意識されていない」等

②上司との摺り合わせが不十分
「上司から組織方針を踏まえた目標の項目や水準の提示がなされていない」
「目標設定時に上司が面談を実施せず、目標内容が本人任せになっている」
「上司に専門知識が乏しく、部下の目標設定が適切か判断できない」等

③設定する目標の内容
「目標の水準や難易度の基準が不明確で、目標レベルにバラつきがある」
「定性目標について適切な達成水準を設定(表現)できない」
「期末に成果が測定できる部署とそうでない部署がある」等

(2)期中(目標遂行)での問題点
目標管理を機能させるためには、上下間のコミュニケーションや適切なフィードバックが必要ですが、1on1による面談や期中の進捗管理等による課題の洗い出しを対面だけでなくチャットツールなども活用しながら行う企業は増加していますが、期中での問題点は次の通りです。

「設定した目標に注力するあまり、目標以外の業務への対応が疎かになる」
「上司が日々の業務に追われ、細かなフォローができていない」
「外部環境等が突然変化しても、適宜対応せず目標内容の見直しが行われていない」等

(3)期末(目標評価)での問題点
期末に目標達成度を評価するにあたり、目標設定時に達成基準を明確に設定しないと評価のバラつきが発生する。また、設定時に難易度を設定したにもかかわらず、達成度を評価する際に難易度を加味してしまうなど現場でのルール運用が適切になされていないこともあります。

「評価面談では達成状況を確認するのみで今後の課題解決や能力開発の方向性が示されない」等

上記の3つの問題は、主として目標管理制度の運用ルールに対する理解の不足やスキルの欠如、意識の低さに起因するものであり、考課者研修や運用マニュアルの作成・浸透、設定ガイドラインの整備、組織目標共有ミーティングや中間フォロー面談の実施等で一定の効果は期待できます。

一方、目標管理制度の構造的な問題、つまり、社員のモチベーション向上や人材育成の促進、あるいは絶対評価と相対評価も含めて処遇への反映などについては、自社のマネジメントポリシーも踏まえて、制度設計も含めて慎重な検討が必要です。

問題の本質

企業が目標管理制度を行う目的は、主に次の3つが考えられます。

➀個々の社員の仕事の取組みを所属組織、そして最終的には会社全体の目標達成につなげるマネジメントツールの中心に位置づけること
②個々の社員の組織業績や全体活動への貢献度を目標達成度という成果指標を用いることで客観的に評価することを目指し、個々の昇給・昇格・昇進・賞与・異動配置などの処遇に反映させること
③社員のモチベーションを高め、自己成長を促し、自己実現につなげること

特に成果主義型人事制度を切欠に導入が進んだ目標管理制度は、➀と②を中心に、業績管理の仕組みに人事考課制度を組み込んだ形でポピュラーなものとなり、本来ドラッカーが提唱した③のような社員の内発的動機付けに基づく自律成長ツールとしての役割は重視されませんでした。

つまり、②のように業績評価と人事考課が強固な関係となっている目標管理制度であれば、社員は多くの報酬を得ようと敢えてハードルの低い目標を設定したり、どうにでも解釈できるような達成水準(状況)を掲げ、できるだけリスクの低い目標を設定しようと動くため、③のような自己成長の実現に向けた目標設定は避けられるというジレンマに陥ることになります。

問題解決のポイント

これらの目標管理制度のジレンマを解決するために、期初、期中、期末それぞれのフェーズでの取り組みで修正を行うことが基本です。

➀期初
・組織目標の共有、組織方針の連鎖
・目標設定のガイドライン(職種、レイヤー別)
・マネジャー同士による目標設定共有
・期初の目標設定が難しい業務への対応(開始後の設定)
・チーム目標の設定とチーム貢献度の評価 等

②期中
・中間レビューや1on1の頻度を上げる
・追加目標のエントリー、既存目標の適宜修正 等

③期末
・振り返り目的の面談を必須とする
・期初設定の難易度を実態に基づき修正する 等

尚、全社目標達成のマネジメントツールとして、モチベーション向上、自己成長を促す機能に軸足を移すのであれば、OKRの導入もお勧めです。
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