同一労働同一賃金

法改正の背景

「働き方改革関連法」における不合理な待遇差の解消に向けて「パートタイム・有期雇用労働法」が改正されました。この背景として、少子高齢化の進展により、2030年には2008年比で1,000万人が減少することが見込まれ、それに伴い生産年齢人口も減少、企業の人手不足は深刻さが増してきていることが挙げられます。

企業が持続的成長を成し遂げるためには通常の従業員のみならず、短時間や有期雇用の従業員も共に活躍できる職場環境を整備して、多種多様な従業員が集まる企業組織を構築することが求められます。そのためには、雇用形態の違いによる不合理な待遇差を解消し、短時間や有期雇用の従業員が納得して働くことが出来る待遇を実現することが求められます。

このような問題意識の下、法整備に向けた議論を経て、雇用形態の違いによる不合理な待遇差に関わる規定は「パートタイム・有期雇用労働法」と「労働者派遣法」に定められることになりました。

不合理な待遇差の解消(均等待遇と均衡待遇)

パートタイム・有期雇用労働法は、同一事業主に雇用される通常の労働者と短時間・有期雇用労働者との間で、基本給や賞与などの個々の待遇ごとに、不合理な待遇差を設けることを禁止しており、その中心となる考え方が、下表に示す「均等待遇」と「均衡待遇」です。

事業主が、均等待遇、均衡待遇のどちらかを求められるかは、短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間で、①職務の内容、➁職務の内容・配置の変更の範囲が同じか否かにより決まります。①と②が同じ場合には、短時間・有期雇用労働者であることを理由とした差別的取扱いが禁止され、「均等待遇」であることが求められます。それ以外の①あるいは②が異なる場合は、「均衡待遇」であることが求められ、短時間・有期雇用労働者の待遇は、①と②の違いに加えて「③その他事情」を考慮して、通常の労働者との間に不合理な待遇差が無いようにすることが求められます。

均等待遇短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間で、①職務の内容、➁職務の内容・配置の変更の範囲が同じ場合は、短時間・有期雇用労働者であることを理由とした差別的取扱いを禁止すること
※均等待遇では、待遇について同じ取扱いをする必要があります。同じ取扱いのもとで、能力・経験等の違いにより差がつくのは構いません。
均衡待遇短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間で、①職務の内容、➁職務の内容・配置の変更の範囲、③その他の事情(※)を考慮して不合理な待遇差を禁止すること
※「職務の内容」、「職務の内容・配置の変更の範囲」以外の事情で、個々の状況に合わせて、その都度検討します。成果、能力、経験、合理的な労使の慣行、労使交渉の経緯は、「その他の事情」として想定されます。

実際には、職務の内容が全く同じであっても経験や能力、成果などの評価によって差が生じることはあるので、均等待遇よりも「均衡待遇」に当てはまるケースが多く存在し、かつ判断が悩ましいと言えます。

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コンサルティングのポイント

同一労働同一賃金は、有期の契約社員やパートタイマーと通常の正規社員との間の不合理な待遇差を解消することにあり、その実現のためには以下の職務分析と職務評価が必要となります。これはジョブ型人事制度の導入とほぼ同じプロセス・手法となります。

➀職務分析
職務分析は、職務分類→職務調査→職務記述書の流れで行います。まず、全社の職務を一定の基準で分類します。その分類した単位職務ごとに職務調査を実施し、個々の職務の内容を明確にし、分析した結果は職務記述書(ジョブディスクリプション)としてまとめます。職務調査は、個別ヒアリング、項目アンケート、実地観察など状況に応じて実施します。

②職務記述書(ジョブディスクリプション)
職務記述書に記載すべき事項は、使用目的等によってケース・バイ・ケースですが、厚生労働省が策定した「職業能力評価基準」に記載されている項目が参考になります。つまり、「職務名称」「職務概要」「職務内容及び職務遂行基準」「必要な知識・経験」の4項目が最低限必要な項目と言えます。その他、「期待される役割・成果」「責任度合い」「提供価値」などを追加することもあります。

③職務評価
職務評価とは、職務の大きさ(含・難易度や重要性、ジョブサイズ)から職務の相対的価値を明確にすることです。職務評価の方法はいくつかありますが、職務の大きさを定量的な数値として比較することができる要素別点数法による評価が最も客観的な手法です。

以上、職務分析や職務評価の結果から賃金体系の再設計への展開方法は、厚生労働省が策定した「職務評価を用いた基本給の点検・検討マニュアル」をご参照ください。