ジョブ型人事制度

ジョブ型(職務型)人事制度とは、社員の年功や能力ではなく、職務を基準とする制度です。昨今コロナ禍によるテレワークの浸透でジョブ型人事制度の導入が拡がっていますが、単にテレワーク体制下でのマネジメントの不便さを補う目的ではなく、ジョブ型のメリット・デメリットをきちんと抑えたうえで導入を検討しなければなりません。職務基準で等級を格付けし、職務の価値や達成基準に応じて報酬が支払われる仕組みですが、ジョブ型に対して年功や能力を基準とする職能資格型人事制度などはメンバーシップ型と言われます。

ジョブ型とメンバーシップ型の違い

項目ジョブ型メンバーシップ型
等級の基軸仕事(職務)基準人(能力)基準
格付け基準職務価値(ジョブサイズ)職務遂行能力
昇格・降格職務の変更(昇格・降格ともに)能力の伸長(通常昇格のみ)
人事評価の対象職務遂行の結果(成果)能力伸長、プロセス、成果
報酬決定職務価値、成果能力伸長、プロセス、成果
人事異動職務変更がない限り異動は無く
ローテーションもない
会社の裁量で定期ローテーション
を実施し、キャリア育成を図る
人材育成スペシャリスト育成
スキルアップは個人次第
ジェネラリスト育成
スキルアップは会社依存しがち
人件費コントロール原則定昇が無く
人件費をコントロールしやすい
慣例的に行われる定昇により
人件費の高ブレを招きやすい
制度設計職務記述書の作成・更新による
設計・メンテのコストが大きい
ジョブ型と比較すると
設計・メンテのコストは小さい
人材採用グローバル人材、デジタル人材等
外部有能人材の獲得に有利
募集ポジションが不明確で
相対的に採用活動で不利
業務アサイン原則的に雇用契約での規定範囲
(適所適材)
アサインする業務範囲が曖昧
(適材適所)
非正規社員賃金設計
(含・高齢者雇用)
同一労働同一賃金の枠組みに
適合し易い
正社員との処遇の違いを
説明しにくい

今、ジョブ型人事制度が求められる背景

ジョブ型人事制度は、戦略に基づいて組織を設計し、各ポストに最適な人材を配置し、市場でも通用する職務価値に見合った報酬を支払うという考え方が根底にあります。欧米企業では、通常組織は戦略に従って設計されるので各ポストの職責も論理的に決められますが、日本企業ではもともと戦略策定の機能が弱いため論理的な組織設計や職責定義が困難なことが多く、その結果、人に合わせたポストや組織の設計が主流となり、人ありきの配置や変幻自在な職責定義が慣習的に行われてきました。まさに職能資格制度に代表されるメンバーシップ型の組織人事の設計・運用環境であったと言えます。

しかし、世界でも未曾有の急速な少子高齢化時代が到来し、グローバルなテクノロジー人材の確保が困難な経営環境となり、従来の右肩上がりの成長を前提とした旧来の日本型雇用システムではいずれ企業経営そのものがもたなくなるという危機感を抱いたことから、国内大手企業が挙ってジョブ型転換による抜本的制度改革を打ち出したことが起点となり、さらにコロナ禍によるテレワークの導入により、「リモート環境下では従来のマネジメント手法によって部下を管理・評価することは難しく、ジョブ型に転換すれば個人の職責は明らかになり、ニューノーマルに適応した組織人事管理が出来るはずである」という不確かな根拠の下での論調が一気に高まったこと、コロナ禍による先行き業績の不透明感が蔓延したことも相俟って、人件費をコントロールしやすいジョブ型人事制度が脚光を浴びることとなりました。

この先、国内の労働力人口が減少の一途をたどる中、定年年齢を超えた高齢者、主婦をはじめとする女性、あるいは外国人労働者等を、日本企業はこれまで以上に積極的に活用し、多様な働き方や雇用形態を取り入れて、受け皿を整備する必要がありますが、そこには同一労働同一賃金の原則が求められます。また、経営の視点で言えば、近い将来70歳までの雇用義務が企業に課されることとなり、人によっては50年以上の勤務期間が想定されようとしている中で、従来のように正社員に対してメンバーシップ型制度に代表される右肩上がりの賃金カーブを保証する余力のある企業は多くはないはずです。そこで人件費コントロールが可能なジョブ型人事制度がその課題解決の切り札として持て囃されるようになったのです。

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コンサルティングのポイント

上記メンバーシップ型との対比表からも分かる通り、ジョブ型制度にもメリット・デメリット共に確認ができますし、それぞれの企業や組織によっても向き不向きはあると思われます。上記の通り、元々戦略策定に不慣れな日本企業は組織設計や職責定義が苦手であるため、一足飛びに欧米企業のようなジョブ型制度を構築するのはハードルが高いことでしょう。

しかし、今後日本企業が晒されるであろう経営環境の劇的な変化を想像するにつけ、従来のメンバーシップ型を続けることの経営リスクは増大する一方であることは自明と言わざるを得ません。もちろん、人事制度改革は、企業カルチャーの深部にも影響を及ぼすイベントでもあるため、拙速な動きは厳に慎むべきですが、今一度企業経営の原点に立ち返り、自社は何を目的としてジョブ型人事制度へ転換しようとしているのか、転換によってどのような効果をどれだけ期待するのか、転換による影響をどう捉えるのかを整理したうえで、例えばハイブリッド志向で階層別、職種別にジョブ型の導入を進める、あるいは職務記述書の詳細作成にこだわることなく、役職別の記述、あるいはスキル要素も取り入れた役割的なジョブ型を検討するなど、流行に踊らされることなく地に足の着いた改革を進めてみてはいかがでしょうか。当社では顧客企業にとって最適な人事制度の設計・導入に関するご相談を承っております。